葉の形や大きさは、植物の種を特徴づける形質で、一義的には遺伝子によってきめられています。しかし、一本の木、一本の枝においても葉の形や大きさは様々で、葉の生長段階における環境（日当たり、土壌水分含量、無機養分の供給量）によって、細胞分裂の回数や伸長の大きさが異なるため、葉の大きさや厚みに違いがでてきます。

実際ヘナの枝につく葉の大きさも様々で、同じ一本の枝でも大きな葉から小さな葉まで多様性があります。

１．養分

　個葉の葉面積は、葉が生育するときの養分の供給状態によって支配され、窒素やリンの供給が不十分であると小さくなり、必要以上の窒素を施用した場合は葉面積および葉数も大きくなる傾向があります（田中 1973)。葉の大きさは遺伝的に決まった限度があるため、養分が十分（過剰）にある際は、無限に大きくなることはなく、葉数の増加も生じます。葉付きが良いというのも、養分が十分にある生育環境である可能性も大きいのです。

２．光環境

　葉の大きさや厚みを変える要因の一つが光です。特に琉球藍などでは顕著にみられる現象なのですが、よく光のあたる場所に生育する株や、樹冠の枝の葉などは、小さく厚みがあり、色味が薄い葉に（陽葉化）、日陰や下枝葉の葉は薄く大きくなり、深緑色の葉に（陰葉化）なります（Oguchi et.al. 2003）。

“葉を大きくできる”ポテンシャルは遺伝子によって決定しますが、その潜在的なポテンシャルに到達するまでの段階的な大きさは、その時々の栽培環境の影響を強く受けます。

田中昭 1973 作物葉の栄養生理． 化学と生物．11（６），346-353

Oguchi et. al. 2003.  Does the photosynthetic light‐acclimation need change in leaf anatomy?  Plant , Cell Environ. 26. 505-512

植物生態学的に、緯度が低いほど（赤道に近い・熱帯地域）、植物の葉が大きいということがわかっています。熱帯程、遺伝的に葉が大きな種が生育しやすい、ということです。これは昼と夜の気温差が、葉の大きさの地理的勾配の重要な決定要因であるためとされています（Wright et.al. 2017）。

沖縄で栽培されているもののなかには大きな葉をつけやすい木というのがあって、それは、弊社が栽培試験の中でインドから研究目的で種子を導入し（植物検疫済）生産農家で栽培していたものが広まったと考えております。インドは沖縄より緯度が低いため、葉が大きくなりやすい形質を有する種子が含まれていたことは想像に難くありません。

Wright et.al. 2017．Global climatic drivers of leaf size. Science. 357（6354）917-921